宮澤賢治の室伏論メモ1
室伏高信
土 に 還 る
「汝は面に汗して食物を喰ひ終に土に帰らん。汝はその中より取られたればなり。」
一
都会万能の夢は破れた。都会万能主義の行詰まりは最早やあまりに明らかになつてきた。十九世紀が農民没落の時代であつたのに対し、二十世紀は都会没落の時代であるべく、凡ての徴候が既に熟した。
人々の眼は期せずして農村に向かつてきた。政治運動も社会運動も若しくは芸術上の傾向さえも、今や漸く都会から農村へと彼等の視線を移したきた。 (本文243頁から)
宮澤賢治
(イ)「農民芸術概論」と(ロ)「農民芸術概論綱要」と(ハ)「農民芸術の興隆」という三つの稿がありますが、(ロ)「農民芸術概論綱要」の中の「序論」の次にある「農民芸術の興隆」と、(ハ)「農民芸術の興隆」の最後の行に、
都人よ来ってわれらに交れ 世界よ他意なきわれらを容れよ
とある。
上田哲著 「宮澤賢治 その理想世界への道程」に、「宮澤賢治と室伏高信」-「農民芸術の興隆」における賢治の文明批評ーがある。
上記の [一] に、「文明の没落」や「土に帰る」の『本には直接的に「農民芸術概論綱要」や「農民芸術の興隆」と符合するような文や語句は見つからなかった』としながらも、『室伏高信の宮澤賢治への影響は否定できない』としている(264頁)。またさらに「羅須地人協会での農耕生活の実践により影響を与えているようにも思える」とも結んでおられる。
賢治はこの「農民芸術概論」で、農民としての直接呼びかけている語句は一箇所、次のように呼びかけているところが有るだけだ。
農民よ奮い立てそしてわれらの---の表現を持て
農民芸術を説くのであるからわざわざ農民と記さづとも われら で良いのであるが、これは賢治は農民であるとしての自覚からとして捕らえてよいのであろう。賢治が農民かどうかは別としてもである。
[二] には「文明の没落」の解説と、更に緒論との関連の解説をされた後、「土に帰る」にも触れている。些細な事であるので恐縮だが、ニ三気が付いた事を記しておく。
私の所に有る大正拾五年五月二十日版(昨日の写真参照)は 定価 金一円六十銭になっている。この本は増補版であるのか。解説によると定価が一円とあるが。また発行部数に付いても分かりにくい。一万一千部掛ける三十版の数は少々多すぎるかもと思われる。
次に本文の三百七十四頁に記されている所に、おそらくミスプリだと思われるが、267ページの鍵がは「霊が、」で、272ページは「281ページ」の間違いであろう。(わたくしの本が違うのかもしれないが)
上田氏の論は羅須地人協会に付いての解説が良くなされている。「語句の一致点はなかなか難しいと思える」事に付いては、わたくしだけではなさそうで安心させられた。
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