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賢治参考図書

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2007-09-09

室伏のモリス観その他

 「農民芸術概論」と「土に還る」との関連については、上田哲氏の論考に詳しく、これ以上につけくわえることは無いのですが、室伏の次のような文があったので参考までに記す。

 「第四章 機械の論理」 「[一] 近代文明は機械の結果である。」と書き出し、結びは「ロオド・バイロンは晦々たる短見者流である。ラスキンは田舎者、モリスは天保銭、トルストイは正にイワンの馬鹿である !」(前回の写真8枚目)。

 「倫敦が幾つかの田舎町に分裂し、商業中心地が貧民住宅地となり、牧場ができ、田園が起こり、ウエストミンスタアが肥料市場と化した。---モリスの記しているところは、われわれの世に、永久きたることなきユトピアであろうか。」(106頁)

 モリスの名前は外にも見られるが、次にアダム・スミスについての室伏の採りあげているところを紹介しよう。

 「資本主義の時代においては、農場は最も不利益な企業である。アダム・スミスの時においてさへ、彼がその民冨論で述べているところによれば、農業は既に欧羅巴における最も不利益なる企業であった。今日は益々その度を高めてきた。農村飢えて死なんとするは、たヾ小作農だけであるのではない。自作農と雖も、地主と雖も、苟くも農業企業にかかわるかぎりにおいて、今日は最も多くの不利益を分配されているのである。農業それ自身が貧困なのだ。都会のそれに比べて、農村それ自体が窮乏なのだ。」(262頁)

 ところで次に、多田幸正氏が「宮澤賢治とウイリアム・モリス ー<芸術>と<労働>の関連についてー」の論考が有る。以下少々長いが引用するのでお付き合いをお願いしたい。

 「モリスの芸術観=労働観について説明しようとするとき、もっとも簡にして要を得た便利な言葉が、」「芸術とは、人間の労働における喜びの表現である」。「これは先の室伏の『文明の没落』にもひかれているものだ。たったこれだけの短い言葉だが、ここには確かにモリスの芸術観ー労働と芸術についての考えが集中的に表現されている。」「この労働の喜びの論理は、モリスが芸術を考える際の中心的な問題というべく、彼の著述や講演の中で繰返し論じられている。例えば、『民衆の芸術』では、『私の理解する真の芸術とは、人間が労働に対する喜びを表現することである。その幸福を表現しなくては、人間は労働において幸福であることはできない』とし、さらに『この真の芸術とは、それを制作する人にも、それを使用する人にも、幸福なものとして、民衆により、民衆のために作られた芸術である』とのべている。モリスにとって斯かる芸術こそが、『存在しうる唯一の真の芸術』であり、『世界の進歩の障害ではなく、手段となる唯一の芸術』であった」(日本文学 1981・10 67頁より)

 「モリスもまた、土地を耕すことがあらゆる仕事の中で『最も必要で最も愉快な仕事』(「有用の仕事と無用の労苦」)だといい、農作業をして、人間が『みずから進んで精力を用いることを楽しいと考え』(「芸術の目的」)る理想的な仕事であることを強調している。いや、『ユートピアだより』に描かれている乾草刈りの場面を一読しただけでも、モリスがいかに農作業のような野外の仕事を重視しようとしていたかがわかろうというものだ。そこでは(もちろん、ユートピアの世界においてだが)、人々は陽気に語り合いながら、『ゆっくりと、しかも上手にたゆみなく働いてい』る。その仕事が『楽しい習性』とさえなっている。彼等は、この乾草刈りの仕事をも含めて、あらゆる労働の中に『自覚された感覚的な喜び』を見出しているのであり、言うなれば『芸術家としての仕事をしている』のである。」(同70頁より)

   多田氏はモリスの引用文献として、

 本間久雄訳「吾等如何に生くべきか」(東京堂書店 大正14)

 大槻憲二訳「芸術のための希望と不安」(聚芳閣 大正14) 

  [ 「民衆の芸術」と「ユートピアだより」は、岩波文庫を参考にされたのか。]

 モリスの「無何有郷だより」と,室伏の「土に還る」はこのへんでわたしの作文はお終いにして、この後はこれについての興味のあるかたの皆さんにお願いといたします。

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